ステーブルコインとは|USDC・USDT・JPYC の違いを初心者向けに
目次
「ステーブルコインなら値段が動かない」と聞いて、USDC と USDT のどっちを買えばいいのか手が止まった人は多いはずです。名前は似ているのに、裏付けも、確かめている人も、日本で買えるかどうかも違います。円建ての JPYC も入れて、同じ物差しで並べてみます。
結論:違いは「裏付けの中身」と「日本で買えるか」で決まる
ステーブルコインは、米ドルや日本円などの値段に 1 対 1 で連動するように設計された、ブロックチェーン上のデジタルのお金です。 発行体がドルや円、国債などの裏付け資産を預かることで、1 枚=1 ドル(JPYC は 1 円)を保つように作られています。
3 つの銘柄のいちばん大きな違いは、その裏付けの中身と、日本の登録業者から買えるかどうかです。USDC は国内の登録業者が扱っていますが、USDT は 2026 年 8 月 27 日時点の金融庁の一覧に載っていません。JPYC は発行体から直接手に入れます。
約 1,836 億ドル
USDT の負債(発行したトークン)
2026 年 6 月 30 日時点・Tether の検証報告
約 741 億ドル
USDC の流通量
2026 年 10 月 5 日時点・Circle の公表値
100 億円
JPYC の累計発行額
2026 年 9 月 18 日時点・発行開始から約 11 か月
1 種類
日本の登録業者が扱うドル建て銘柄
USDC のみ・2026 年 8 月 27 日時点の金融庁の一覧
出典: Tether「Transparency」、Circle「USDC」、JPYC 株式会社のプレスリリース(2026 年 9 月・@DIME 掲載)、金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」
ステーブルコインとは何か。値段が動かないように作ったデジタルのお金
ビットコインは 1 日で数パーセント動くのがふつうです。送金の途中で値段が変わると、送った側と受け取った側で「いくら送ったのか」が食い違ってしまいます。この不便をなくすのがステーブルコインの役目です。
「送金するだけなら、PayPay でよくない?」と思うかもしれません。正直、国内の相手ならそのとおりです。個人間送金の比較で書いたように、同じアプリ同士なら手数料は 0 円。ステーブルコインが効くのは、海外の相手に送るときと、アプリをまたぐときです。
固定の仕方は 1 つではありません。裏付けに何を置くかで、大きく 4 つに分かれます。
| 型 | 仕組み | 代表例 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 法定通貨担保型 | 発行体がドルや円、国債を預かり、同じ額のコインを発行する | USDC・USDT・JPYC | 発行体と預け先の銀行を信じる必要がある |
| 暗号資産担保型 | ETH などを多めに担保に入れて発行する | DAI | 担保の暗号資産が急落すると崩れやすい |
| コモディティ型 | 金などの現物を裏付けにする | 金連動のトークン | 換金に手間がかかる |
| アルゴリズム型 | ドルや国債の裏付けを持たず、プログラムで供給量を調整して値段を保つ | UST(2022 年に崩壊) | 信用が崩れたとき、戻す裏付けを持たない |
この記事で比べる 3 つは、ぜんぶ法定通貨担保型です。アルゴリズム型は 2022 年 5 月に UST が崩れてから、すっかり目立たなくなりました。金融庁の資料も、その月の出来事を短く記録しています。
5月上旬、米ドルに連動するいわゆるアルゴリズム型のステーブルコインであるUSTの価格が急落。
出典: 金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」事務局説明資料(2022 年 6 月 6 日)
日本の法律には「ステーブルコイン」という言葉がありません。2023 年 6 月 1 日に施行された改正資金決済法は、法定通貨建てで額面どおりに払い戻されるものを「電子決済手段」と呼びます。ビットコインのような「暗号資産」とは別の枠です(e-Gov 法令検索「資金決済に関する法律」第 2 条)。USDC と JPYC はこの枠で扱われています。国内で発行できるのは銀行・資金移動業者・信託会社だけ。海外発のコインは、金融庁の登録を受けた業者を通して売買します。

出典: 金融庁(2026-10-09 時点の画面)
名前はややこしいですが、使う側がまず見るのは「国の登録を通っている業者か」です。登録は価値の保証ではないので、裏付けの中身はこのあと自分の目で見ていきます。
USDC・USDT・JPYC を同じ軸で比べる
3 つを同じ表に並べました。とくに見てほしいのは、裏付けの中身・確かめる人・日本で買えるかの 3 行です。
| 軸 | USDC | USDT | JPYC |
|---|---|---|---|
| 発行体 | Circle(米国) | Tether(エルサルバドル) | JPYC 株式会社(日本・資金移動業者) |
| 連動する通貨 | 米ドル | 米ドル | 日本円 |
| 裏付けの中身 | 政府系 MMF(短期国債などで運用する投資信託)約 84%+銀行の現金 約 16% | 米国債が中心。金・ビットコイン・担保付き貸付も含む | 日本円の預貯金と国債(発行残高の 100% 以上) |
| 確かめる人・頻度 | Deloitte・毎月 | BDO・四半期ごと | 発行体が裏付けを開示(資金移動業として財務局の監督下) |
| 日本の登録業者から買えるか | 買える(SBI VC トレード。コインチェックは登録済みで取扱開始は未発表) | 登録一覧に載っていない | 発行体の JPYC EX で直接(本人確認あり) |
| 1 回の上限 | 業者ごとの規定 | — | 発行・償還とも 1 回 100 万円 |
| 対応チェーン | Ethereum・Solana・Base など多数 | Tron・Ethereum など多数 | Ethereum・Polygon・Avalanche・Kaia |
出典: Circle「Transparency」(2026 年 7 月 31 日時点の検証報告)、Tether「Transparency」(2026 年 6 月 30 日時点)、JPYC「契約締結前交付書面兼説明書(資金移動業)」、JPYC 公式サイト(対応チェーン)、金融庁「電子決済手段等取引業者登録一覧」
USDC と USDT の欄にある「確かめる人」は、会計事務所による監査ではありません。ある時点で裏付けが発行額を上回っているかを確かめる検証報告(attestation)です。それでも、毎月出るか四半期に 1 回かの差は、見る側には地味に効きます。
USDC:毎月、会計事務所が裏付けを確かめている
USDC を発行する Circle は、裏付け資産の内訳を毎月公開しています。2026 年 7 月 31 日時点の Deloitte の検証報告では、裏付け資産(流通量ではなく裏付けの額)は約 719 億ドル。8 割強が BlackRock の運用する政府系 MMF で、残りが銀行の分別口座の現金です。

出典: Circle(2026-10-09 時点の画面)
見るべきなのは、裏付けが「何で」できているかです。短期の米国債と現金だけなら、払い戻しが集中しても現金化で詰まりにくい。これが USDC の強みです。
米国では 2025 年 7 月 18 日に GENIUS 法が成立しました。決済用ステーブルコインの発行体には、現金や短期国債などの低リスク資産で 1 対 1 の裏付けを持つことと、毎月の開示が求められます。施行は遅くとも 2027 年 1 月 18 日です(米議会 S.1582)。現金と短期国債という USDC の構成は、この法律が求める形と重なります。
USDT:いちばん大きいが、裏付けの中身は幅広い
USDT を発行する Tether は、四半期ごとに会計事務所 BDO の検証報告を出しています。2026 年 6 月 30 日時点では、総資産が負債(発行した USDT など)を約 41 億ドル上回る状態でした。裏付けの中心は米国債。金やビットコイン、担保付き貸付も含まれています。

出典: Tether(2026-10-09 時点の画面)
発行残高は USDC の 2 倍以上(時点は 6 月末と 10 月初めで異なります)で、世界でもっとも流通しているステーブルコインです。海外取引所の取引ペアは USDT 建てが多く、ここは正直 USDC が追いつけていません。一方で、金やビットコインの値下がりが裏付けの評価額を削る余地がある点は、USDC との違いです。
JPYC:円に 1 対 1。日本の資金移動業者が発行する
JPYC は、資金移動業者の登録を受けた JPYC 株式会社が 2025 年 10 月 27 日に発行を始めた、円建ての電子決済手段です。 登録は 2025 年 8 月 18 日付です。同社によると、電子決済手段としての円建てコインを出せる国内初の会社です(JPYC 株式会社 沿革、登録時のプレスリリース)。

出典: JPYC 株式会社(2026-10-09 時点の画面)
取引所では買わず、JPYC EX で本人確認と銀行振込をすると、自分のウォレットに JPYC が届きます。送るときは別途ネットワーク手数料(ガス代)がかかります。
円建てなので、日本に住んでいる人にとっては為替の心配が要りません。立て替えを 1 万円分返したいなら、1 万 JPYC を送るだけ。ドル建てでは避けられない「1 ドル=何円で計算するか」の換算が消えるのは、けっこう大きいです。ドル建ての USDC で立て替えを返すときの計算例は、USDC で割り勘する方法にまとめてあります。
用途で考える
日本の相手に円で送るなら円建ての JPYC。海外の相手や、ドルで持ちたい事情があるなら、国内の登録業者が扱う USDC。前述の金融庁の一覧のとおり、国内の正規ルートがあるのはこの 2 つです。
「1 ドルから外れる」は起きる?USDC と UST の実例
ステーブルという名前でも、値段が 1 から外れたことはあります。ただし、外れ方がまったく違います。
USDC(2023 年 3 月)
- きっかけ現金を預けていたシリコンバレー銀行の破綻
- 最安値0.88 ドル(3 月 11 日)
- 戻ったか米当局が預金の全額保護を発表した後、数日で 1 ドルに戻った
- 裏付け約 400 億ドルのうち 33 億ドルが問題の銀行にあった
UST(2022 年 5 月)
- きっかけ売りが殺到し、LUNA との交換による調整が追いつかなかった
- 最安値1 ドルを大きく割り込んだ
- 戻ったか戻らなかった
- 裏付けドルや国債の裏付けを持たなかった
出典: Circle「An update on USDC and Silicon Valley Bank」(2023 年 3 月 10 日・米国時間)、Reuters(Kitco 掲載・2023 年 3 月 11 日)、金融庁 事務局説明資料(2022 年 6 月 6 日)
USDC の場合、問題の銀行にあったのは裏付け全体の 1 割弱でした。それでも 10 万円分を持っていたら、ドル円が動かなかったとして、その瞬間の評価は約 8 万 8,000 円。戻る保証はありませんでした。
UST は信用が崩れたとき「戻す根拠」がなく、そのまま落ちきったわけです。USDC と UST の明暗を分けたのは、裏付けに現金や国債があったかどうかでした。 3 つの銘柄を比べるときも、まず裏付けの中身を見ます。
注意
ステーブルコインは法定通貨ではなく、預金保険の対象でもありません。発行体が破綻すれば、裏付け資産があっても払い戻しに時間がかかることがあります。登録は価値の保証や推奨ではない、という趣旨の注意書きも金融庁の登録一覧に載っています。生活費や貯金を置く場所ではなく、送金や決済に使う分だけ持つとリスクを抑えられます。
日本で買うなら、まず金融庁の登録一覧を見る
「どこで買えばいいのか」は、金融庁の一覧を見れば 1 分で答えが出ます。登録を受けた電子決済手段等取引業者は、SBI VC トレードとコインチェックの 2 社です。USDC を取扱中なのは SBI VC トレードで、コインチェックは登録済みながら取扱開始は未発表です。
- 1
金融庁の登録一覧を開く
「電子決済手段等取引業者登録一覧」で検索するか、上の出典リンクから PDF を開く
- 2
業者名と銘柄を見る
載っていない業者・銘柄は、国内の正規ルートではない(SBI VC トレードは 2025 年 3 月 4 日、コインチェックは 2026 年 8 月 27 日に登録)
- 3
発行体の公開ページを見る
裏付けの中身と、誰が何か月ごとに確かめているかを確認する
- 4
上限と手数料を確かめる
JPYC は 1 回 100 万円。取引所は業者ごとの規定がある
- 5
送るときはチェーンを揃える
同じ USDC でも、違うチェーンに送ると届かない
買ったあとの置き場所
買ったあとの置き場所にも注意が要ります。取引所に置きっぱなしだと、取引所のトラブルで動かせなくなるリスクはふつうの暗号資産と変わりません。すぐ使わない分を自分のウォレットに移せば取引所の破綻リスクは避けられますが、代わりに復元用の言葉をなくすと取り戻せません。両面を知ったうえで選ぶ手順は、ハードウェアウォレットの選び方に書いています。
税金はどうなるか
国税庁の FAQ は、暗号資産と電子決済手段をまとめて扱っています。売却や交換で生じた利益は、原則として雑所得です(国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」(令和 7 年 12 月更新))。ドル建ての USDC は 1 ドルのままでも、円に換えるとレートの差で損益が出ます。

出典: 国税庁(2026-10-09 時点の画面)
外貨建ての電子決済手段の損益をどう計算するかは、暗号資産と同じとは限りません。FAQ の電子決済手段の項目を確かめるか、税務署に聞くのが確実です。税率の基本と計算の考え方は、次の記事にまとめてあります。
あわせて読みたい暗号資産の税金|利益にかかる税率・計算例・確定申告の基礎
よくある質問
Q. ステーブルコインと暗号資産は何が違いますか?
ステーブルコインの多くは、日本の法律では暗号資産ではなく「電子決済手段」です。法定通貨建てで額面どおりに払い戻されるものを電子決済手段、ビットコインやアルゴリズム型を暗号資産として、2023 年 6 月 1 日施行の改正資金決済法が分けています。
Q. USDC と USDT は裏付けの公開がどう違いますか?
公開資料の上では、USDC は短期米国債中心の MMF と銀行の現金を裏付けにし、Deloitte が毎月の検証報告を出しています。USDT は米国債が中心ですが金やビットコインも含み、BDO の検証報告は四半期ごとです。
Q. 日本で USDT は買えますか?
いいえ、2026 年 8 月 27 日時点では買えません。金融庁の登録一覧で、国内の登録業者が扱うドル建ての電子決済手段は USDC だけです。無登録の海外業者で手に入れると、国内の法律による利用者保護の外になります。
Q. JPYC は取引所で買えますか?
いいえ、発行体の JPYC EX で本人確認をして、銀行振込で発行を受けます。1 回の発行・償還の上限は 100 万円です。
Q. ステーブルコインに税金はかかりますか?
売却や円への交換、ほかの暗号資産との交換で利益が出れば、原則として雑所得に区分されます。個別の取引がどう扱われるかは、税務署か税理士に確認してください。
まとめ
次に「ステーブルコイン」という言葉を見たら、まず発行体の公開ページを 1 つ開いてみてください。上の比較表の「裏付けの中身」と「確かめる人」の行を、自分の目で埋め直してみる。それだけで、名前の似た銘柄の差がはっきり見えてきます。
もう 1 つ、見ておくと面白い動きがあります。2026 年 6 月 24 日には、SBI 新生信託銀行が発行する信託型の円建てコイン JPYSC が始まりました(SBI 新生銀行ニュースリリース)。当面は SBI VC トレードの口座内だけで使えるものですが、資金移動業型の JPYC とは別の発行の形です。JPYC と JPYSC を見比べると、「誰が発行していて、どう裏付けているか」という物差しが、円建てどうしでも効くことがよくわかります。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので(2026 年 10 月時点の公表情報にもとづきます)、個別の投資判断・税務判断・法的判断を行うものではありません。特定のサービスや銘柄の利用・購入を勧めるものでもなく、ステーブルコインは元本が保証されたものではありません。暗号資産・電子決済手段の取り扱いは各社の最新の公式情報を確認し、税務の具体的な取り扱いに不安がある場合は、税務署または税理士にご相談ください。



