暗号資産の利益にかかる税率と計算例

友達に勧められてビットコインを少額で買ってみた。気づいたら利益が出ていて嬉しいけれど、「これ税金どうなるんだろう」が頭をよぎる。調べると「最大55%」という数字に一気に不安になります。
暗号資産の利益は「雑所得」として最大55%課税される
暗号資産の売買益は所得税法上「雑所得」に分類され、給与などの他の所得と合算して5%〜45%の累進課税+住民税10%、最高税率は合計55%です(国税庁 暗号資産FAQ・令和7年12月版)。
ただし「55%」は課税所得4,000万円を超える人の話なので、少額の利益で半分持っていかれるわけではありません。株式投資の一律20.315%と比べると重いのは確かですが、20代の所得水準なら実効税率は20%前後に落ち着くケースが多い。このあと計算例で具体的に見てみます。
所得税の税率は7段階です。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 330万〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 695万〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 900万〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
この税率に住民税10%が加算されるので、実際の負担率は表より10ポイント高くなります。
税金が発生する6つの取引
「売って円にしたときだけ」と思いがちですが、実はそれだけではありません。
| 取引 | 課税? | ポイント |
|---|---|---|
| 売却して円に換える | する | 売却額 − 取得価額 = 利益 |
| 暗号資産同士を交換する(BTC→ETH等) | する | 交換時の時価で「売却」とみなされる |
| 暗号資産で買い物をする | する | 支払い時の時価 − 取得価額 = 利益 |
| マイニング・ステーキング報酬 | する | 受け取った時の時価が雑所得 |
| エアドロップ | ケースによる | FAQ に専用の問いがなく、扱いは税理士に確認 |
| 保有しているだけ | しない | 含み益では課税されない |
見落としやすいのは2行目の「交換」です。ビットコインをイーサリアムに交換しただけで、円には換えていないのに利益が確定します。DeFiでスワップを繰り返していると、気づかないうちに課税対象の取引がけっこう積み上がっていたりします。
計算してみる — 課税所得200万円の新社会人がBTCで30万円の利益
数字で見ると案外シンプルです。課税所得200万円の会社員がビットコインで30万円の利益を出したケースで計算してみます。
給与の課税所得が200万円、暗号資産の利益が30万円とすると、合算した課税所得は230万円です。速算表で所得税を計算します。
- 暗号資産ありの場合: 230万円 × 10% − 97,500円 = 132,500円
- 暗号資産なしの場合: 200万円 × 10% − 97,500円 = 102,500円
- 差額(暗号資産分の所得税): 30,000円
- 住民税(暗号資産分): 30万円 × 10% = 30,000円
暗号資産30万円の利益にかかる税金は合計約6万円。実効税率は約20%です。
「55%取られる」と聞くと身構えますが、この所得水準なら税額そのものはそこまでではありません。たいへんなのは、取引履歴を集めて損益を計算する作業のほうだったりします。
複数回に分けて買った暗号資産は、1単位あたりの取得価額の計算方法で利益額が変わります。届出をしなければ総平均法(年間の購入総額 ÷ 購入総量)が自動適用されるので、まずはこれで確定申告を済ませれば十分です。取引が多い人は損益計算ツール(Cryptact、Gtaxなど)を使わないと正直きつい。
「20万円以下なら申告不要」の落とし穴
年末調整済みの給与所得者は、給与以外の所得が年間20万円以下なら所得税の確定申告は不要です(国税庁 No.1900)。ただし、ここに大きな落とし穴があります。
注意
20万円以下でも住民税の申告は必要です。所得税と住民税は別の制度で、20万円ルールは所得税だけの特例。住民税の申告をしないと、あとから市区町村から連絡が来ることがあります。住民税の申告は、市区町村の窓口かeLTAX(電子申告)で行います。副業の所得と合わせた判定や、住民税を自分で納付する方法は副業の確定申告と20万円ルールの記事にまとめました。
もう一つ注意すべき点。暗号資産の利益だけで20万円以下でも、フリマアプリの転売益やアフィリエイト収入など他の雑所得と合算して20万円を超えれば確定申告が必要です。「暗号資産は15万円だから大丈夫」と思っていたら、メルカリの利益を足したら超えていた、というのは割とあるパターンです。
2028年から税率20.315%へ — 税制改正のポイント
2026年3月に暗号資産の税制を大きく変える改正所得税法が成立しました。金融商品取引法の改正を経て、2028年1月から適用される見込みです(大和総研 平石隆太「暗号資産取引に20%の申告分離課税導入へ」(2026年2月))。税率は一律20.315%になり、損失は3年間繰り越せるようになります。
注意点は2つ。改正後の分離課税が適用されるのは「国内の登録業者を通じた取引」に限られる見込みです。海外取引所やDEXでの取引は引き続き総合課税(最大55%)になる可能性が高い。また暗号資産同士の損益通算はできても、株式の損益とは通算できません。
よくある質問
Q. ステーブルコイン(JPYC等)で精算した場合は課税されますか?
JPYCのような日本円連動のステーブルコインは資金決済法上「電子決済手段」として扱われ、額面どおりの精算なら損益は発生しません。ただし、ビットコインなどの変動する暗号資産をJPYCに交換する時点で、暗号資産側に売買損益が発生します。ステーブルコインでの精算の具体的な手順は暗号資産で割り勘を精算する方法で解説しています。
Q. 暗号資産の損失は翌年に繰り越せますか?
現行制度(2027年分まで)では繰り越せません。ただし同じ年の暗号資産同士の損益通算は可能です(ビットコインの損失でイーサリアムの利益を相殺するなど)。
まとめ
年末に取引所から取引履歴をダウンロードして、損益計算ツールに流し込む。20万円を超えたら確定申告、超えなくても住民税は忘れずに申告する。履歴の集め方から申告ソフトへの入力・スマホでの提出までは、暗号資産の確定申告のやり方に順番どおりまとめました。
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務判断を行うものではありません。具体的な取り扱いに不安がある場合は、税務署または税理士にご相談ください。


